その2 ジレンマを解決する方法
断熱とは単に熱を逃がさない、入れないという遮断の役割しかありません。それゆえ不必要な熱がこもる、必要な熱がとれないなどジレンマに悩まされると前回述べました。今回は、そのジレンマを解決する方法を考えてみます。
1.冬と夏のジレンマそして昼と夜のジレンマを解決しなければならない
冬と夏そして昼と夜、それぞれ求められる要素は異なります。
太陽熱は冬は求められ、夏は避けたい。夜間の涼しさや寒さは、夏は求められ、冬は避けたい。
この相互に相容れない要素を、いかに解決するのか?
一般的解決方法は、夏はクーラー、冬は暖房と機械設備に頼ることですが、PACは、第一に建築的手法でできる限りの挑戦をし、足らないところを機械設備で補うと考えます。
2.選択的断熱、可変断熱ができたら断熱のジレンマはなくなる。
断熱が必要な時は断熱の役割をし、無断熱もしくは熱を受け入れたいときは、断熱の役割が解かれたり、より積極的に集熱の役割をする、そんな材料があれば、すべてのジレンマは解決します。
しかし、断熱のジレンマは少し複雑です。大きくは冬と夏、そして冬の昼と夜、夏の昼と夜あるいは日射面と非日射面といりくんだ矛盾です。
とても材料の面からだけでは解決できそうもありません。 材料と建築的工法の組合せにその解決方法を求めました。
3.断熱材プラス「流れる空気」もしくは「静止空気」に答えを求めた。
空気の流れ、対流は熱を運びます。そして空気が動かなければ熱を遮断します。 ペアガラスやグラスウールなどはまさしく静止空気の断熱効果を利用したものです。 この原理を建物に応用できないものでしょうか?
建物全体をすっぽりと断熱材で被う。そして、その上に、空気が流れたり、止まったりする層ができれば、選択的あるいは可変的断熱構造ができると考えました。
4.外張り断熱(外断熱)プラス「可変的通気層」の構造が生まれた。
建物全体を隙間なくすっぽりと被うためには、グラスウールのような綿状のタイプでは所詮不可能です。そこで板状の断熱材が必要となりました。
断熱ボードで屋根面、壁面。基礎面で隙間なく包むことが第一条件となりました。
20数年前のことですから、恐らく日本で最初の外(張り)断熱住宅の誕生です。その後、継続して5000棟あまり建築され続けていますから、PACはまさしく外(張り)断熱住宅の観点からも先進者でした。
しかも、当初から外(張り)断熱に留まっていたのではなく、その屋根面と壁面の断熱ボードの上に、空気が流れたり、静止したりする「可変的通気層」をセットしました。
当時は、通気工法なるものはほとんど存在していませんでしたから、単に通気層と呼んでいましたが、まさしく熱選択的可変通気層がその時点で誕生しました。
5.熱選択的可変通気層とは?
現在の通気層のほとんどは、外気を流しているだけです。通気層下部から外気を導入し、通気層上部から再び外へと空気を逃がします。
PACの通気層は、上下で建物内部と連通しています。これは屋根・壁の通気層とも共通です。 これにより、建物内部の空気を通気層内で暖め、再び建物内部へ返すことが可能となりました。
そして通気層の空気の流れを止めることができれば、通気層の空気は静止することで断熱層に変わります。
そうなれば断熱のジレンマは解決します。
6.上昇する気流は通し、下降する気流は止まる通気層。
太陽光は屋根面や壁面にふりそそいでいます。屋根面・壁面は暖められ、その熱が通気層の空気に伝わります。
空気は暖められて軽くなり上昇していきます。
PACの通気層は上下で建物内部と連通していますから、通気層下部から建物内の空気が通気層内に吸引され、暖められて、再び建物内部へと戻っていきます。
こうして、冬の太陽熱は通気層内の上昇する空気を媒体として建物内部へ採りこまれました。
一方、夜間や非日射面の屋根面・壁面は冷やされていますから、通気層内部の空気も冷却され重くなって下降しようとします。
もし、PACの通気層に何の工夫もなければ、冷たい空気が建物内部に還流される結果となります。 そうなればプラスマイナス0的働きになってしまいますから、暖かい空気は採り、冷たい空気はシャットする工夫が必要となります。
上昇する空気は通過でき、下降する空気は止める必要があります。 一方通行させればいいわけです。そうとわかれば、工夫は簡単なことです。 一方通行弁とか逆止弁とか言われ、他の分野では、様々な工夫がされています。
その考え方を、通気層に応用すればいいだけのことです。
7.エアダンパーの誕生
通気層の下部に、自動的に上昇気流は通し下降気流はストップする逆止弁(エアダンパーと名付けました)を、上部には通気層から建物内部への空気の流れをスムーズにする空気取入口をセットすることで、PACの熱選択的可変通気層が完成しました。
断熱面の外側で集熱され、断熱面の内部でその熱が保たれるという、冬の理想形が出来上がりました。
以来、ダンパーも改良に改良が重ねられ、現在の断熱型のエアダンパー、ルーフダンパーに落ち着きました。
次は冬と夏のジレンマについてです。






