その3 夏の調和を計る方法

前回テーマは、冬期の断熱ジレンマとその解決でしたが、今回は冬と夏のジレンマについてです。冬を暖かくと、建物の断熱化が進み、その結果、夏はクーラーなしでは住めない家になってしまいました。
PACは冬の断熱ジレンマを乗り越えたと説明しましたが、そのままのスタイルを夏に持ちこめば、やはり、暑い家になってしまいます。
今回は、PACの冬と夏の調和を計る方法を探ります。

1.どんな方法でも、冬の暖かさを求めると、夏は暑くなってしまいます。
前回述べましたPACの熱選択的可変通気層は、屋根面と壁面から太陽熱を集めるシステムです。
そのままでは、夏も集熱してしまいますから、やはり暑い家になってしまいます。
どうしたらいいのでしょうか?

2.夏の基本は、熱を入れない、入った熱は速やかに捨てる、です。
前回にはふれていませんが、PACの冬期間は、床下と越屋根の換気口が閉じられています。
可変通気層で集められた熱は、躯体内空間へ入り自然循環して建物全体へ配られます。それにより建物全体の温度が均一に上がっていくわけです。
躯体内空間とは床下空間・1階2階のふところ空間・小屋空間を内壁空洞で一連につないだ空間、すなわち部屋の外側周囲の空間のことです。
この躯体内空間が冬は、熱を建物全体に分配する役割を果たしています。
となれば、夏はその熱分配機能を停止させ、逆に熱を外へ排出する機能へ転換させればいいということになります。
同時に、PACの可変通気層も冬の集熱機能から、夏は排熱機能に転換できればいいわけです。
いわば建物の衣替えです。

3.冬の家、夏の家が同じ建物で実現、衣替えのできる家が誕生しました。
躯体内空間は、床下換気口と越屋根換気口で外気と連通しています。
冬はこれらを閉じ、躯体内空間を独立した閉鎖空間にするのですが、夏はこれら換気口を開放して、躯体内空間を外気と一連につなげることができます。
すなわち、外気-床下換気口-床下空間-1階の内壁空洞-1階2階のふところ空間-2階の内壁空洞-小屋空間-越屋根換気口−外気
と、一連の空気の流れ道ができあがります。
この流れ道が、熱を外へ捨てる役割を果たします。

4.躯体内空間は熱を外へ捨てる。
室内側から見てみます。天井の上、壁の向こう側、床の下が躯体内空間です。
室内に入り込んだ太陽熱は、室温を高めますが、天井面や壁面を通じて躯体内空間に伝わり、外へと運ばれます。
すなわち、室内に熱をこもらせないようにと働いています。
そして躯体内空間で熱が外へ捨てられるという機能は、二つの原理によります。
一つは、空気は暖められると上昇するということ、二つは風力、すなわち風の押し込み機能(正圧利用)と引き抜き機能(負圧利用)を使っています。
内壁空洞は垂直、小屋空間は屋根勾配に沿って斜めですから、熱気は速やかに上へ向って流れ、越屋根換気口から外へと逃げていきます。
同時に、越屋根換気口は負圧利用で引き抜きの力、床下換気口は正圧利用で押し込みの力が働きますから、躯体内空間の空気の流れは促進されます。
無風時でも働きますし、風があればあるほど、その機能はアップします。
風力利用は、また、夜間の外冷気を躯体内空間へ採り入れることを可能としました。
一方、PACの可変通気層は夏も冬と同じ流れ方をしますが、役割は変化します。
冬は集熱機能として働きましたが、夏は躯体内空間との組合せで、排熱機能として働きます。

5.PACの可変通気層も、夏は熱を外へと速やかに捨てる。
夏は太陽高度が上がり屋根面に強烈な日射がふりそそぎます。まさしく、屋根面で目玉焼きも不可能ではない状態です。建物自体が熱気を排出する機能を持っています。
PACの様に、外(張り)断熱でなければ、小屋空間の温度は50℃にも60℃にもなってしまいます。
そして屋根面の上の通気層は、冬は集熱層としての役割ですが、集熱とは逆さから見れば、瓦など屋根材の熱を背面から奪っていることですから、この熱を速やかに外へと捨てられれば、小屋空間への熱的影響を抑えることになります。
PACの屋根通気層の上昇する気流は、越屋根換気口へとストレートに運ばれ、すぐに外へと捨てられます。
壁面の通気層も、小屋空間の高い所で躯体内空間へ入り、同様に速やかに外へと捨てられます。
外(張り)断熱プラス排熱通気層と二重の効果といえます。
さらに、基礎や土間などのコンクリートへ夜間の外冷気の蓄熱などの効果が加わります。
こうしたトータルな建築的手法の積み上げが、断熱のジレンマを解決していきます。

6.断熱のジレンマを総合的に建築的手法で解決するとパッシブソーラーになります。

冬と夏などの断熱ジレンマを解決してくると、PACのパッシブソーラーとしての考え方が浮かび上がってきます。
次回は、その観点からです。