その4 断熱のジレンマを解決して   パッシブソーラーハウスへ

断熱のジレンマは、冬と夏、それぞれの昼・夜、と、入り組んだジレンマがあること、そして、その解決方法をこれまで3回にわたって述べてきましたが、今回は、その複雑なジレンマを総合的に建築的手法で解決してくると、パッシブソーラーとしてのPACになるという観点から見ていきます。
パッシブソーラーハウスを簡単に説明すると、機械設備を使用せずに、建築的手法で自然のエネルギーを建物内に採りこみ省エネルギーに貢献する住宅、ということになります。

1.パッシブソーラーハウスの原則は2つ
パッシブソーラーとして成立するためには、少なくとも2つの原則をクリアする必要があります。
ひとつは、冬モードと夏モードの切り替えができること。
次に、各モードにおいて自然エネルギーの「集熱−分配−蓄熱−放熱」サイクルが行なわれることです。

2.冬モードと夏モードの切り替えを、PACは「衣替えのできる家」と表現しました。
自然エネルギーの代表は太陽熱です。これまでも述べてきましたが、太陽熱の暖かさは冬求められ、夏はその暑さを避けたいとなります。
逆に、夜間など外の冷気は、冬は避けたい、夏は求めたいとなります。
求められることが全く逆さになるわけですから、当然、冬と夏の切り替えは必要となります。
PACは、越屋根と床下の換気口を開閉して、躯体内空間の空気の流れを切り替えることなどで、それに対処していることは前回までに述べてきました。
今回は、熱のサイクルを中心に見ていきます。
「集熱−分配−蓄熱−放熱」のサイクルは、冬夏とも共通です。
違いは、冬は太陽熱などの暖かい熱、夏は夜間外気などの涼しい熱がサイクルするということです。

3.PAC、冬の熱サイクル
冬は太陽熱を、屋根面と壁面の通気層そして開口部で集めます。
冬のエアサイクルの空気の流れ

太陽熱を受けて通気層内を上昇してきた暖かい空気は、小屋空間に入ります。
開口部から入った太陽熱や生活熱は、天井面や内壁面を暖め、それらの面が小屋空間や内壁の空気を暖め、それら暖かい空気は、やはり、小屋空間へと集まります。
分配機能は内壁空洞が受け持ちます。小屋空間や床下空間などの躯体内空間は縦型の内壁空洞で連通されています。
空気は温度差で上下に動きますから、温度の高い空気は内壁空洞を上昇し、温度の低い空気は内壁空洞を下降します。
冬季の閉鎖された躯体内空間内のことですから、当然、空気循環の流れが生じます。
外(張り)断熱された内側の空気循環は、躯体内空間の温度差を徐々に解消していきます。
同時に、空気に触れる物質、特に、基礎や土間のコンクリートに蓄熱が進みます。
昼間の熱が、コンクリートなどに蓄えられます。
そして温度が低下する夜間などに、その蓄えられた熱が放熱されます。
放熱された熱は、やはり躯体内空間の空気循環にのせられて、建物全体へと運ばれます。
当然、躯体内空間の熱は、床面や壁面、天井面を暖め、建物内から冷たい所をなくし省エネルギーに役立つということになります。

4.PAC、夏の熱サイクル
夏は、夜間の涼しい熱を集めます。これは、開放された躯体内空間の上昇気流によりますから、集熱の主役は、やはり内壁空洞です。夏のエアサイクルの空気の流れ
前回述べましたように、夏の内壁空洞では、温度差と風力により上昇気流が生じています。
床下換気口から夜間の涼しい外気が入り、内壁空洞を上昇して、やがて小屋空間そして越屋根換気口から外へ、という空気の流れが生じます。
この空気の動きが集熱の役割です。
そして、その間にやはり空気に触れる部位に蓄熱されるのですが、主な部位はやはり熱容量の大きい基礎などのコンクリートということになります。
すなわち、上昇する空気の流れが分配の役割も同時に果たしています。
こうして蓄えられた夜間の涼しい熱は、翌日の朝から昼間にかけて、やはり、内壁空洞の上昇する空気にのって、躯体内空間を上昇します。
そして、床面や壁面、天井面を通じて室内へと放熱されるというサイクルになります。
単なる断熱住宅とは異なり、室内にこもる熱を外へと放出しますし、夜間の涼しい熱も使えるのです。

5.さらに間取りや調湿材料など使い方の工夫を加える

PACのパッシブソーラーとしての基本的熱サイクルを述べましたが、これらの工夫に、太陽や風の恵みを得られる間取りの工夫や、湿度のバランスをとる材料を上手に使うなど、トータルに建築的手法を駆使する必要があります。